数日後、ラミエルのコンパクト型スパコンに一通のメールが届いた。俺たちが使っているケータイとかのメールと変わらない、文字だけの短いメールで、そこにはこう書かれていた。
「せいぜい木馬に気をつけろ」
 どうやらあの二人組、マクスウェルの魔女1号2号からの挑戦状らしい。だが、どういう意味なんだ?俺たちは急いで桂木二尉に連絡を取り、俺たちにあてがわれた防衛省の中の小さな会議室で相談をした。
 しかし桂木二尉にも、その文面が何を意味するかは見当がつかないようだった。俺たちは夜までネットなどで調査してみたが、やはり分からない。もう遅いので、麻耶とラミエルは家に帰し、俺はいざとなったらそこに泊まり込むつもりで、検索を続けた。
 だが、何も分からないまま作業を続けるうちに、俺はいつしかウトウトとまどろんでしまったらしい。はっと目を覚ましたはずみでマウスをクリックしてしまい、あわてて目の前の壁の時計を見るとちょうど夜中の12時だった。いかん、いかん、居眠りしてる場合じゃ……
 次の瞬間、俺は心底驚いて椅子から飛び上がった。不意に俺の背後から「わたしを呼んだ?」という声がしたからだ。あわてて振り向くと、どこから入って来たのか、セーラー服の女の子がそこにいた。まっすぐな黒髪が腰まで伸び、背は小さい。一見小学生にも見えるが、その赤い瞳は鋭い眼光を放ち、なぜか片手に赤い紐が巻かれたワラ人形を持って、妙に大人びた抑揚のない声で、その子は俺に言う。
「人を呪わば穴二つ……」
「いや、ちょっと待て。君は誰だ?一体どうやってここに入った?」
 ま、まさか、マクスウェルの魔女たちの仲間か?だが、その少女はむしろ不思議そうに俺にこう答えた。
「だって今、わたしを呼んだでしょ?」
「い、いや。君を呼んだ覚えはないが?」
「そう」
 と言ってその少女はくるりと振り返り、相変わらず抑揚のない声で誰にともなく言った。
「間違いだったみたい。帰るよ、みんな」
「あいよ、お嬢……」