俺たちは防衛省の建物に戻り、さっきとは別の部屋で桂木二尉から話を聞いていた。あの二人の新しい地球征服要員についての彼女の見解はこうだった。
「北条君、おっと、妹さんと区別つかないと困るから、下の名前で呼んじゃっていいかしら?」
「ああ、そうですね。俺はかまわないですよ」
「じゃあ早太君、マクスウェルの悪魔って知ってる?」
「ううん、聞いた事はあるけど、詳しい事までは……」
「じゃあ、これを見て」
そう言って二尉は透明な、掌にかろうじて載るぐらいのプラスチックの玉を俺たちに見せた。中には2ミリぐらいの大きさの赤と白、二色の小さな粒が入っていて、おおむね色ごとに半々ずつ玉の中に分かれて収まっている。二尉はその玉を机の上でころころと転がしながら説明を続けた。
「今この玉の中の赤い粒と白い粒は分かれている。でもこうやって動きを加えると、それぞれの色がてんでばらばらに混じり合ってしまうわよね」
確かに玉の中では赤と白の粒が混ざってしまって、全体にピンク色になったように見えた。
「では、この玉を開けないで、つまり中の粒に手を触れないで、最初のように赤い粒と白い粒が分かれた状態に戻せるかしら?」
「え!いや、それは無理でしょ」
「最初に赤い粒と白い粒が分かれていた状態、あれを力学という分野では『エントロピーが低い』と表現するの。で、時間が経って混ざり合った状態を『エントロピーが高い』と言う。言い換えれば秩序立った状態は『エントロピーが低い』、混じり合った状態は秩序が失われているから『エントロピーが高い』なわけね。これは自然界のあらゆる状態で言える事なわけ。そして全体的、長期的にはあらゆる種類のエネルギーは、エントロピーが低い状態から高い状態へ移って行く。これを『エントロピー増大の法則』と呼ぶわ」
「ああ、それなら聞いた事があります」
「さっき、あの宇宙人が空に浮いたでしょ?あれは地球の重力に逆らって物を持ち上げたわけだから、位置エネルギーを持っている状態と言えるわね。そのまま空中を移動したら運動エネルギー。そういう風に自然界には、人工的に作られた物も含めて、いろんな種類のエネルギーがあるわけだけど、エントロピー増大の法則では、あらゆる種類のエネルギーは最終的には熱エネルギーに変換されるとされている」
「北条君、おっと、妹さんと区別つかないと困るから、下の名前で呼んじゃっていいかしら?」
「ああ、そうですね。俺はかまわないですよ」
「じゃあ早太君、マクスウェルの悪魔って知ってる?」
「ううん、聞いた事はあるけど、詳しい事までは……」
「じゃあ、これを見て」
そう言って二尉は透明な、掌にかろうじて載るぐらいのプラスチックの玉を俺たちに見せた。中には2ミリぐらいの大きさの赤と白、二色の小さな粒が入っていて、おおむね色ごとに半々ずつ玉の中に分かれて収まっている。二尉はその玉を机の上でころころと転がしながら説明を続けた。
「今この玉の中の赤い粒と白い粒は分かれている。でもこうやって動きを加えると、それぞれの色がてんでばらばらに混じり合ってしまうわよね」
確かに玉の中では赤と白の粒が混ざってしまって、全体にピンク色になったように見えた。
「では、この玉を開けないで、つまり中の粒に手を触れないで、最初のように赤い粒と白い粒が分かれた状態に戻せるかしら?」
「え!いや、それは無理でしょ」
「最初に赤い粒と白い粒が分かれていた状態、あれを力学という分野では『エントロピーが低い』と表現するの。で、時間が経って混ざり合った状態を『エントロピーが高い』と言う。言い換えれば秩序立った状態は『エントロピーが低い』、混じり合った状態は秩序が失われているから『エントロピーが高い』なわけね。これは自然界のあらゆる状態で言える事なわけ。そして全体的、長期的にはあらゆる種類のエネルギーは、エントロピーが低い状態から高い状態へ移って行く。これを『エントロピー増大の法則』と呼ぶわ」
「ああ、それなら聞いた事があります」
「さっき、あの宇宙人が空に浮いたでしょ?あれは地球の重力に逆らって物を持ち上げたわけだから、位置エネルギーを持っている状態と言えるわね。そのまま空中を移動したら運動エネルギー。そういう風に自然界には、人工的に作られた物も含めて、いろんな種類のエネルギーがあるわけだけど、エントロピー増大の法則では、あらゆる種類のエネルギーは最終的には熱エネルギーに変換されるとされている」



