妹神(をなりがみ)

「ただ?ただ、何ですか?」
「ああ、いや。検査結果の事ではのうて、母親の百合子さんがそれを聞いた時の喜びようが普通じゃありませんでしてな。その遺伝子異常があったからと言うて、特に不都合はない物でしたけん、なんでそこまで狂喜乱舞と言うてええほど喜ぶんじゃろ?とびっくりしましてな。その事もあって今でもよう覚えとるわけです」
「その後深見百合子さんとお会いになった事は?」
「いえ、一度も。なんでもだいぶ以前に東京の方へ引っ越されたとは聞いとりましたが」
 それから母ちゃんは丁寧にその元大学教授のおじいさんに礼を言い、俺たちはその家を出てまた長崎空港へ向かった。今度は沖縄行きの飛行機に乗るためだ。空港のラウンジで出発を待つ間、俺はたまりかねて母ちゃんに訊いた。
「なあ、さっきの先生の話と今度の件と何の関係があるの?」
 母ちゃんはそれには答えず、黙ってショルダーバッグからまた紙きれを取り出して俺に渡した。それは古い新聞記事のコピーだった。上の端を見るとどうやら長崎の地方新聞らしい。
 そこには十代半ばらしい少女の顔写真が載っていて見出しには「郷土が生んだ奇跡の超能力少女」と書いてあった。そして記事の文章を読んで俺は母ちゃんが言いたい事が分かった。そこには少女の名前がこう書いてあった。「深見百合子」と。