翌朝、寝不足気味の頭でリビングへ行くと母ちゃんがダイニングテーブルの上に何かを並べて頭を抱えていた。ふと見るとテーブルの上と椅子の近くの床に本が山ほど散らばっている。テーブルの上の灰皿にはタバコの吸い殻がこぼれ落ちそうなほど山盛りになっていた。
「母さん。ひょっとして一晩中?」
「ええ。調べ始めたらキリがなくなってきちゃってね」
「何を調べてたわけ?一晩中もかかって」
「霊能者のベースになっている宗教なり信仰。あの殺人鬼のね」
「それで何か分かった?」
「わけが分かんないって事が分かった。そんなとこね……」
「え!専門家の母さんでも分からないのかい、何も?」
「まず、これ見て」
母ちゃんはそう言ってテーブルの上にあるいくつかの小さな物を順番に手に取る。最初のやつはこの前俺も見た。悟が殺された夜、あの殺人鬼が美紅に向かって投げつけた十字架らしき物。
「これは十字架だとすればキリスト教の物よね」
次に母ちゃんは一枚の四角い紙を手に取る。隆平の家の回りで住吉たちが眠らされていた。そして住吉が眠り込んでいた場所の近くの電柱に貼ってあった紙切れだ。
「この上に書かれているのはね、梵字というのよ。これであの家の周囲に結界を張ったみたいね」
「ボンジ……ケッカイ……何だよ、そりゃ?」
「梵字というのはサンスクリット語の文字、簡単に言えば古代インドの文字よ。それが仏教と一緒に中国へ、それから日本へも伝わって、密教系のお坊さんが魔よけとかに使う呪文みたいな物になったわけ。梵字は結界を作るのにも使われるの。結界というのはね、いわば目に見えない壁。本来は邪悪な霊とかを中に入れないように、まあバリアーみたいに使う物なんだけどね。これはインドが起源で中国由来、かつ仏教の秘術よね」
「母さん。ひょっとして一晩中?」
「ええ。調べ始めたらキリがなくなってきちゃってね」
「何を調べてたわけ?一晩中もかかって」
「霊能者のベースになっている宗教なり信仰。あの殺人鬼のね」
「それで何か分かった?」
「わけが分かんないって事が分かった。そんなとこね……」
「え!専門家の母さんでも分からないのかい、何も?」
「まず、これ見て」
母ちゃんはそう言ってテーブルの上にあるいくつかの小さな物を順番に手に取る。最初のやつはこの前俺も見た。悟が殺された夜、あの殺人鬼が美紅に向かって投げつけた十字架らしき物。
「これは十字架だとすればキリスト教の物よね」
次に母ちゃんは一枚の四角い紙を手に取る。隆平の家の回りで住吉たちが眠らされていた。そして住吉が眠り込んでいた場所の近くの電柱に貼ってあった紙切れだ。
「この上に書かれているのはね、梵字というのよ。これであの家の周囲に結界を張ったみたいね」
「ボンジ……ケッカイ……何だよ、そりゃ?」
「梵字というのはサンスクリット語の文字、簡単に言えば古代インドの文字よ。それが仏教と一緒に中国へ、それから日本へも伝わって、密教系のお坊さんが魔よけとかに使う呪文みたいな物になったわけ。梵字は結界を作るのにも使われるの。結界というのはね、いわば目に見えない壁。本来は邪悪な霊とかを中に入れないように、まあバリアーみたいに使う物なんだけどね。これはインドが起源で中国由来、かつ仏教の秘術よね」



