「漢字で書けばこう。沖縄の言葉ではティンジウガン。ユタが使う霊能力の中でも最高クラスの技よ」
なるほど。最近では俺も段々沖縄の言葉に慣れてきていた。初めて耳にすると何が何やら分からないけど、意味が分かって漢字で見ると何となく標準日本語と発音が似ているんだよな。
「ああ、美紅があの時口にした言葉だな。どんな技なんだい?」
「成仏できなくてこの世をさまよっている悪霊をユタ自身の体の中に一度取り込んであの世に送る、という技よ。ユタが使う霊力の中でも一番高度で難しい物なの。成功した場合でも、とてつもない体力と精神力を消耗するのよ。まして今回は失敗したんだから、美紅の体にも霊力にも耐えきれない負担がかかってしまったのね」
「つまり成仏させようとしたけど、できなかった。そういう事?」
「そう。でも、どうして?……美紅ほどの力の持ち主でも成仏させられないほどの怨霊が存在するなんて信じられないわ」
母ちゃんはそう言って両手で頭を抱えた。そう言う母ちゃん自身もたった一晩でげっそりやつれたように見えた。俺が何と言葉をかけていいか悩んでいると、思いがけない方向から声がした。
「あれはヒーマブイじゃない……」
なんと、それは美紅だった。いつの間に気がついたのか、パジャマ姿のままリビングの入り口にドアにすがりつくようにして立っていた。いや、立っているだけでも辛そうだ。
俺と母ちゃんはあわてて美紅を大きい方のソファに運んで寝かせた。ハア、ハアと荒い息をしながら美紅が言葉を続ける。
「お母さん、あれはヒーマブイじゃなかった」
なるほど。最近では俺も段々沖縄の言葉に慣れてきていた。初めて耳にすると何が何やら分からないけど、意味が分かって漢字で見ると何となく標準日本語と発音が似ているんだよな。
「ああ、美紅があの時口にした言葉だな。どんな技なんだい?」
「成仏できなくてこの世をさまよっている悪霊をユタ自身の体の中に一度取り込んであの世に送る、という技よ。ユタが使う霊力の中でも一番高度で難しい物なの。成功した場合でも、とてつもない体力と精神力を消耗するのよ。まして今回は失敗したんだから、美紅の体にも霊力にも耐えきれない負担がかかってしまったのね」
「つまり成仏させようとしたけど、できなかった。そういう事?」
「そう。でも、どうして?……美紅ほどの力の持ち主でも成仏させられないほどの怨霊が存在するなんて信じられないわ」
母ちゃんはそう言って両手で頭を抱えた。そう言う母ちゃん自身もたった一晩でげっそりやつれたように見えた。俺が何と言葉をかけていいか悩んでいると、思いがけない方向から声がした。
「あれはヒーマブイじゃない……」
なんと、それは美紅だった。いつの間に気がついたのか、パジャマ姿のままリビングの入り口にドアにすがりつくようにして立っていた。いや、立っているだけでも辛そうだ。
俺と母ちゃんはあわてて美紅を大きい方のソファに運んで寝かせた。ハア、ハアと荒い息をしながら美紅が言葉を続ける。
「お母さん、あれはヒーマブイじゃなかった」



