なんとか隆平をなだめすかして一階のリビングへ連れ出し、俺は改めて母ちゃんと美紅を隆平に紹介した。美紅が例の手から火の玉を出現させる術を見せたら隆平も信じる気になったようだ。
 隆平は美紅の足元にひざまずいて「お願いだ、助けて」と何度も何度も繰り返し懇願した。
 隆平のお母さんが家の真向かいの空き家を俺たちのために借りてくれていた。俺と母ちゃんと美紅はその家の二階に待機して隆平の家を見張ることになった。
 夕方になってその部屋でコンビニで買ってきたお握りや飲み物で腹ごしらえをしながら、俺たちは作戦を立てた。母ちゃんが言うには、純の幽霊の出現する時期にはある程度の法則性があるらしい。
「今までの事件の起きた間隔からの推測なんだけどね。純君の幽霊は大体三週間からぐらい置きに現れているようなのね」
 母ちゃんがお握りを頬張りながら言った。そう言えばあの連続殺人事件はそんな間を置いて起きてるよな。
「でもなんで?」と俺は一応訊いてみる。
「幽霊の都合なんて分からないけどね。ひょっとしたら幽霊にとってこの世に出現するためのエネルギーみたいな物が必要で、それを補充するのにある程度の時間がかかるのかもね。少なくともそう考えれば、どうして七人全員を一度に殺さなかったのか、という点は説明できるんじゃない?」
「それじゃ……悟が殺されてからもう三週間ぐらい経ってる。そろそろ出て来てもいい頃ってわけ?」
「そういう事になるわね」
 その時双眼鏡で外を見張っていた美紅がアッと声を上げた。俺と母ちゃんはお握りを放り投げて窓に突進した。言ってるそばから現れたのか?いや、しかし夕方とは言えまだ外は明るいぞ。明るいうちから出られるのか、あの幽霊は?