妹神(をなりがみ)

 だが母ちゃんは自信に満ちた顔でこう断言した。
「自分の子供をむざむざ殺される、それをボケっと見てる親がこの世にいると思う?手はとっくに打ってあるでしょ」
「手は打ってあるって……幽霊相手にどうやって俺を守るんだよ?相手は人間じゃないんだぜ。それも信じられない不思議な力を使って人を簡単に殺せる相手なんだぜ」
「そう、相手はこの世の者ではない、超自然的な力の持ち主。それに対抗できるのは同じく超自然的な力しかない。……あんた、ここまで聞いてまだ気がつかない?」
 あっ!この世の物ではない超自然的な力で、そして純の幽霊ではない何か……美紅の事か!
「じゃ、美紅が俺たちの家に来たのって……」
「そう、あたしが沖縄から呼んだのよ。沖縄のユタもある種の霊能力者。つまりこの世の物とは違う不思議な力の使い手。そして美紅はそのユタの中でも特に強力な霊能力者の家系で、あたしの母さん、つまりあんたと美紅のおばあちゃんが認めた程の素質のあるユタ。殺人鬼である幽霊と戦ってあんたを守れる人間がこの世にいるとしたら、あたしの知る限り美紅だけよ。そして美紅はあんたの実の妹。つまり琉球神道で言う、兄を霊的に守る『をなり神』でもある。あんたを純君の幽霊から守れるとしたら美紅しかいない。だからおばあちゃんに頼んで美紅を東京に呼び寄せたのよ」
「ちょ、ちょっと待てよ!じゃあ、イザイホーとか言う物がどうとか、こうとかって、あれも……」
「それはそれで嘘じゃない」
 俺の言葉を遮ったのは美紅だった。相変わらず無表情な顔で、俺の方を向きながら言う。
「でも、おばあちゃんからはこう言われた。あたしのお母さんがあたしの力を必要としている。だから東京へ行って『えけり』を守れと。だから、あたしはここへ来た」