その二枚目の紙は少し古ぼけていた。それにコピー機で複写した物のようだ。母ちゃんの言葉に俺は正直言ってビビってはいたが、ここまで来てやめるわけにはいかない。その紙に目を通す。こう書いてあった。
『お母さん。ぼくはもう生きていられません。毎日が地獄です。生き地獄です。だから死にます。ごめんなさい』
 俺はあっけに取られて母ちゃんを見た。
「ちょ、ちょっと。これってまさか純の……」
「そう、遺書よ。まあ、とにかく最後まで読みなさい」
 俺は続きを読んだ。そこには純が学校でいじめを受けて、どんなにつらかったか、それが幼い言葉で綿々と書かれていた。
『もし、死後の世界があるなら、そして幽霊になって仕返しができるのなら、あいつらだけは呪い殺してやりたい。それはこの七人です。
東孝太郎
玉城由紀夫
風間信二
村山武
上田悟
山崎隆平』
 俺は雷に打たれたような気がして、あやうくその紙を手から落としそうになった。そ、そんな馬鹿な!いじめって……じゃあ、純が自殺したのはいじめを苦にしてだったのか?それもこのメンバーからいじめられていたって……いやそんな馬鹿な!
「こ、この最初の四人の名前……この一枚目のメモの……」
「そう、例の連続殺人事件の四人目までの被害者の名前よ。それもその純君と言う子の遺書に書いてある順番に殺された。そして五番目に書いてある上田悟君が五人目の被害者として殺された」
 母ちゃんが淡々とそういうのを聞きながら、俺はやっと納得した。そうか。悟が自分は五人目だと言っていたのはこういう事だったのか!それで六人目が隆平。俺はその紙に目を戻し最後の一行を見た。
 そして今度こそ、その紙は俺の手から床にはらりと落ちた。最後の一行にはこう書いてあったからだ。
『遠野雄二』