俺はキレかけた。母ちゃんに向かって大声で叫んだ。
「できるわきゃねえだろ!そんな事!俺の昔のクラスメートが自分の目の前で殺されたんだぞ!」
 母さんは新しいタバコをくわえて火をつけながら言った。
「まあ、あんたの性格ならそう言うと思ってたわ。それにそこまで悟君から意味深なこと聞かされた後じゃ、なおさらよね」
 母さんはタバコをくわえたままソファから立ち上がり「すぐ戻るからそこで待ってて」と言って自分の部屋に行った。戻って来た時、手に古ぼけた小さな封筒を持っていた。ソファに座り直すと、封筒から二枚の紙を取り出して俺の方に差し出した。
「な、なんだよ、これ?」
 俺は一枚目の紙に目を落とした。それは真新しい紙で母ちゃんの筆跡で四人の名前が書いてあった。
『東孝太郎、玉城由紀夫、風間信二、村山武』
 どれも聞き覚えのある名前だ。ううん、何だっけ?……あっ!悟と同じだ!みんな俺の小六の時のクラスメートじゃないか。俺の方ではそれほど親しいとか仲がいいとは思ってなかったけど、でもまあ、あの頃はよくつるんで一緒にいたよな。
 でも、なんでここにこいつらの名前が出てくるんだ?それになんで母ちゃんがこんな紙持ってるんだ?
 俺はその上の紙をどかして二枚目の紙を見ようとした。すると突然母ちゃんが俺のその腕をつかんだ。痛いほど力がこもっている。
「雄二、それが、あたしが言った『知らない方が幸せな事』よ。本当にいいのね?」
 俺はこっくりとうなずいた。母ちゃんは「そう」と言って手を離した。そして俺は一枚目の紙をめくった。