それから数日後、六月の最後の週の月曜日。朝から俺の学校全体がちょっとした緊張に包まれていた。その日の一時間目は急遽全校集会に変更され、全生徒が体育館に集められた。
 そして俺たちは、例の中学三年生が連続して、それも世にも怪奇なやり方で殺されるという連続殺人事件の遂に四人目の犠牲者が出た事を知らされた。
 被害者はまた中三の男子。場所はまた東京西部。そして、今度の死に方は今までにもまして異様だった。死因は内臓の火傷。なんと遺体の胃腸から鉛が大量に出てきたそうだ。警察の発表では溶けた鉛を口から大量に流し込まれたとしか考えられないそうだった。溶けた鉛となりゃ温度は数百度にもなるだろう。そんな物が口から消化器に入ったら内臓は焼けただれてしまう。
 けど、俺みたいなチューボーでも、そんな事やろうと思っても不可能なのは分かる。どこかの山奥にでも監禁されていたのなら別だが、その被害者は商店街のビルとビルの隙間で見つかったそうだ。それも十五分ほど前に、買い物に行くと言って家を出たのを家族がはっきり覚えていた。
 溶けて何百度にもなった大量の金属を人目に触れずにどうやって持ち歩く?百歩譲ってそれが可能だったとしても、どうやって中三の体の大きさだけは一人前になりつつある男の口の中にだけ、体の他の部分には一滴もこぼさず、注ぎ込むなんてマネが誰にできるというんだ?
 一連の事件が起こった場所は俺たちの学校から電車で二時間以上かかるぐらい離れているから、うちの学校に直接関係はないだろうが、念のため、生徒全員に気を付けるように、という話だった。
 この頃になると、俺はこの一連の事件が何かの超自然現象、あるいは霊的な現象の仕業じゃないか?と思うようになっていた。
 少し前までの俺ならそんな考え鼻で笑っただろうが、美紅という霊能力者の不思議な力を自分の目で見た今では、そういう可能性も否定はできないと思うようになっていた。