四月の一人目は胴体の中央がまるで絞った雑巾みたいにねじられた状態で見つかった。上半身と下半身が正反対の方向を向いていたというひどい有様で、死因は内蔵破裂。最初はダンプカーにでも轢かれたんじゃないかと思われたが、車の痕跡は何もなかったそうだ。
 二人目は先月の半ば、ビルから転落死した。それだけなら事故死の可能性もあったが、落ちていた地面の場所がそのビルから三百メートルも離れていたから普通の転落じゃない。その被害者の片方の靴が脱げてビルの屋上で見つかったそうだから、そこから転落したのは間違いないんだが、どうやったら三百メートルも離れた場所に落ちるなんて事ができる?仮に本人が自殺するつもりで思いっきり助走をつけて飛び降りたとしても、空を飛んだとしか思えない距離だ。誰かに投げ落とされたとしか考えられないという結論になったが、それにしたってどんな怪力の持ち主なんだ?その犯人は。
 そしてニュースで三人目の被害者の話が流れていたわけだ。この三人目は家の近くの公園の木の枝に串刺しになった状態で見つかった。そしてその枝というのが地上から八メートルの高さ!ニュースのアナウンサーが言うには、串刺しにされてからしばらくは生きてもがいていた形跡があったそうだ。
 殺人事件なんて珍しくはないこの大都会でも、さすがにこれは異常過ぎる。身の毛もよだつとはまさにこの事だ。だが、それ以上に俺にとって妙に引っかかったのは三件とも東京西部の、俺が小学校まで住んでいた地域の近くで起きている点だった。