「ま、待て!何の真似だ?」
「美紅ちゃんをあたしに下さい!」
「ああ、熨斗付けてくれてやる。今日このまま持って帰れ。……じゃねえ!なんだ、それは?」
「あはは、もちろん冗談よ」
 絹子はピョンと立ちあがって続ける。
「いやね、今日の女子の水泳、二年生のクラスと一緒だったのよ。二年C組」
「ああ、美紅のクラスか。それがどうしたんだ?」
「もう大騒ぎよ。美紅ちゃん背は小さめだけどスタイルいいんだもん。沖縄の女の子って体型が日本人離れしてるって聞いた事はあったけど。いやあ、あれはたまりませんねえ。女のあたしが見てもどきどきしちゃった」
「おまえそういう趣味があったのか?だからいつになっても彼氏ができねえんだよ」
「彼女いない歴イコール年齢のあんたにだけは言われたくないわよ」
「あと、冗談でも美紅にそんなセリフ言ったらぶっ殺すぞ。あいつは田舎の離れ島育ちでその手の事には免疫がないんだよ。あいつが変な趣味に目覚めでもしたらどうしてくれるんだ?」
「ああら、やっぱり美人の妹がいるとお兄ちゃんは心配?将来美紅ちゃんのお婿さんになる人はたいへーん」
「おまえの旦那になる奴よりはましだと思うがな」
「ああ、でもここからは真面目な話だから、ちょっと耳貸して」
「ちゃんと返せよ」
「だから!ここからは真面目な話だってば!」
 絹子に手招きされ俺は片方の耳を少し近付ける。
「あんまり美人でスタイルいいし、それに無口なクール・ビューティって感じでしょ?美紅ちゃん。あの連中に目をつけられちゃったらしいのよ」