妹神(をなりがみ)

 俺が島の女の人たちに体を揺さぶられて気がついた時にはもう夜が明けかかっていた。俺と母ちゃんはウタキの中で倒れていて、俺の腕の中では美紅の体が既に冷たくなっていた。純のお母さんはウタキの森のすぐ外で木にもたれているところを沖縄県警から駆け付けた警官隊によって発見された。彼女もすでに息絶えていた。
 俺と母ちゃんはその後島の駐在所で当時の事情を訊かれたが、もちろん本当に起きた事を話すわけにはいかない。母ちゃんが警察官の推測に適当に話を合わせ、大体こんなところでけりがついた。
 純のお母さんは俺を追って久高島へやって来て、俺をかばって美紅は刺されて死んだ。純のお母さんの指紋が美紅の胸に刺さっていたナイフから検出されたから、これは問題ない。その後、純のお母さんは出直そうとしてウタキの森を出た所で突然心臓麻痺を起して死んでしまった。
 俺の母ちゃんはあの女神に乗りうつられた後の事を全く覚えていなかった。だから美紅の最期を知っているのは俺だけだ。そしてなぜ純のお母さんが何かを抱きしめるような格好で死んでいたのか、なぜその死に顔が頬笑みさえ浮かべた安らかな物だったのか、それも俺だけが知っている。
 きっとあの人の魂だけがどこか別の時代あるいは別の世界へ行ったのだろう。そこで生まれ変わった純と幸せに暮らしてくれる事を俺は心から願った。