妹神(をなりがみ)

 俺は喉が張り裂ける程の大声で叫んだ。たとえ神様だとしても、そんな事黙って見てられるか!俺の大事な妹なんだ!だがその女神はやさしく頬笑みながらも反論を許さぬ口調で俺にこう告げた。
「その刃はその娘の心臓を貫いておる。その刃が胸を貫いた時、その娘の肉体は既に死んでいたのだ」
「な……そんなはずはない!美紅はあの後も俺に向かってしゃべって……」
「既にその時、心臓は止まっておった。『えけり』である汝を守りたい、守らねばならぬ、その想いの強さゆえに死して後もなお汝の前に立ち続けた。あの母親は刃を振り上げた時それに気づいたのだ。だから一度振り上げた刃を思わず降ろした」
 そうか……あの時純のお母さんが美紅のまん前まで来て驚いていたのはそのせいだったのか!
「その娘は死力を尽くして自分の使命を果たし、そして力尽きたのだ。兄としてその娘を想うのであれば、もう安らかに休ませてやるがよい」
 その女神が手を引くと美紅の体から光の塊が出て行った。そしてそれは光で出来た美紅の形になった。美紅の肉体はまだ俺の膝の上に抱かれているのに。
「待ってくれ!あんた神様なんだろ!だったら美紅を生き返らせてくれよ!代わりに俺が死ぬ!俺の命を代わりにやる!だから!」
 だがその女神はゆっくりと首を横に振った。
「神といえど、いや神だからこそ、命を左右してはならぬのだ。人のみならず生きとし生けるものの命はそれほどに尊い物。神ですらもてあそんではならぬ程尊い物なのだ。だが、汝の気持ちに免じて、この娘の魂の行き先を見せてやろう」