妹神(をなりがみ)

 そう叫ぶ俺にその女神は穏やかな声で答える。
「私はいつの時代も変わらぬ一つの存在である。だが、その時代その土地の人間たちによって様々な姿と名前を与えられてきた。遠い昔の西洋の地では人は私をこのような姿として見、大地母神ガイアと呼んだ」
 またその光が次々に形を変える。その度にその光で出来た何かはこう言った。
「少し後の世の西洋では聖母マリア……東洋の地では観音菩薩……古代エジプトではイシス……アジアの南ではシヴァ……汝の国ではアマテラス……」
 まるで万華鏡のように次々と姿を変えるそれを俺は茫然と見つめていた。そしてそれは最後に沖縄の民族衣装を着た女性に似た姿に変わり、こう言った。
「私は幾千年もの間、愛と慈悲を求めそれにすがる人間たちから様々に違う姿を与えられ、様々な名で呼ばれてきた者。されど、ここは琉球の地なれば、今は女神アマミキヨと名乗ろう」
 こ、これが美紅の言っていた沖縄の女神なのか!でも世界各地の神話に出てくる女神たちと実は同じ物?そんな事ってあるのか?
 俺の心を見透かしたように、いやきっと俺の心が直接読めるのだろう、その女神はこう続ける。
「時代や土地や国や民族が違えど、人の心が求める物に変わりはない。平穏を願い、愛する者の無事を、幸福を願う心に違いはない。そして親が子を想う心もまた同じ。私は定まった形を持たぬ存在ゆえ、見る者によって違う姿に見える。だが、私は常に同じただ一つの存在であった。人間が編み出した宗教という物の違いに応じて、様々な姿と名前を与えられてきたにすぎぬ」
 そしてその女神は俺たちの前にかがみ込みそっと美紅の体に手を伸ばした。
「気高きノロの血を引きながら一介のユタとして名もなき民のために生きた娘よ。汝を勇者と認め我がとこしえの地へ汝の魂を招こう」
「待ってくれ!」