妹神(をなりがみ)

 光で出来た純は母親の懐に飛び込んでこう言った。
「お母さん。その世界でもまた僕を産んでくれる?」
「ええ、当り前よ……」
 涙声でそう言って純のお母さんは光で出来た純をギュッと抱きしめる。マリア観音が純のお母さんの頭の上に手を置いて告げる。
「では旅立つがよい」
 その瞬間、純のお母さんの姿はその場からかき消えた。何の前触れもなくあっという間に消えてしまった。
 今までもさんざん信じられない物を見て来た俺だが、今度のはもう次元が違う。こんな事が、こんな事が本当に存在するなんて。でも、これで戦いは終わった。俺の胸に美紅の体が倒れ込んできた。あはは、さすがのこいつもほっとして気が抜けたんだろうな。
「おい美紅。もうだいじょ……」
 その時俺はやっと気がついた。美紅はもう息をしていなかった。左胸のナイフが刺さった部分から真っ赤な血が流れて白いセーラー服の上着を染めていた。俺は地面に膝をつき、脚の上に美紅の体を抱えて、頬をはたき肩をゆさぶり、そして……だがもう何をしても美紅は何の反応も示さなかった。
「おい美紅。目を開けてくれ。よせよ、うそだろ、冗談だろ……こんな、こんな……」
 マリア観音が俺たちのそばへ近づいて来る。これはやはり俺たちの味方じゃないのか?俺の視線に気づいたのだろう。マリア観音は両手を広げ、またまばゆい光の塊に戻り、そしてまた別の形に収斂する。それはギリシャ神話に出てくるような女神の姿だった。
「あ、あんたは何なんだ?隠れキリシタンの神様じゃなかったのか?」