妹神(をなりがみ)

 美紅の光る棒が遂に純のお母さんの肩を直撃した。そのまま棒で地面に体を押さえこむ。その体勢で美紅は純のお母さんにうって変わった穏やかな口調で語りかけた。
「虐げられ、迫害されてきた者同士が戦って何になる?殺し合って何になるの?」
 純のお母さんは棒で地面に押し倒されたまま悔しそうにうめいた。
「きれい事を……愛する者を失った後でも同じセリフが吐けるかどうか、試してやる」
 さっき美紅に弾き飛ばされて地面に転がっていたナイフがスウっと宙に浮き上がり、まるで生き物のように俺めがけて飛んできた。あまりのスピードに俺はよける事も逃げる事もできずに棒立ちになっていた。
 これまでか?そう思って目を閉じおそるおそるまた開くと、俺の前に誰かが両腕を大きく広げて立ちはだかっていた。それは美紅だった。あの距離からここまで一瞬で移動したのか?だが、あのナイフは美紅の左胸に深々と突き刺さっている!
「おい!美紅!おまえ……」
「大丈夫。ここはウタキの中だからこれぐらいは平気」
 美紅は振り向きもせずに平然とした口調で言う。そうなのか。すごいもんなんだな、ウタキの霊力ってのは……
「なぜだ!なぜそこまでしてそんなやつを守る?」
 純のお母さんがナイフを手に俺たちの方へ歩いて来る。だが、ナイフからはあの青白い光が消えていた。本人の足取りもまるで酔っぱらっているかのようにフラフラしている。どうやら美紅との死闘で超能力パワーを使い果たしたのだろう。美紅が姿勢を変えず身じろぎもせずに答える。
「あたしはまだ子供だから母親の気持ちは分からない。でも家族を愛する心は本土も沖縄も、世界中どこでも同じ。だから。ただ、それだけ」
 美紅まであと数歩という所まで近づいた純のお母さんはそれでもナイフを振り上げ、しかし美紅の方を見てだらりとその腕を垂らした。
「小娘……あんたは……」