地面に敷いたビニールシートに三人で腰を降ろして休憩しながら、俺の頭の中には不安が渦巻いていた。あの純のお母さんの超能力は一人殺す度に強くなっていると美紅は言っていた。もう美紅の霊能力を上回るほどに。
 今来られたら美紅ではあの人には勝てない。それともさっきお婆ちゃんが美紅に渡したあの棒が何かの秘密兵器なのか?なんとかのレイボクとか言ってたし。
 そんな事を考えていた最中、突然女の声がその木に囲まれた広場みたいな場所に響き渡った。俺たちは全員地面から飛び上がるように立ちあがった。
「これで隠れたつもり?」
 いた!さっき俺たちが入って来た森の中の道から長い布を頭からすっぽり被った人影がこちらへ歩いて来る。マリア観音の姿をイメージした格好だ。間違いない。深見百合子、純のお母さんだ。ついに来てしまったのか、この時が。
「ニーニとお母さんは下がっていて」
 美紅が振り返りもせずにそう言って、真正面から純のお母さんに向かって足を踏み出す。純のお母さんの手元から四つの白い紙きれが宙に放たれた。そのまま宙を舞い、美紅を四方から取り囲む。
 やばい!前の戦いで美紅がコテンパンにやられたあの技だ。今度はしょっぱなから出してきやがった。四枚の紙、いや式神と言ったっけ、それが青白い光を発して青龍、朱雀、白虎、玄武の姿に変わる。そして青白い稲妻のような光を四方から一斉に美紅に向けて飛ばす。
 美紅はお婆ちゃんからもらった棒を左手に持ったままそのまま突っ立っていた。四神の攻撃をもろにくらってしまう。美紅、どうしたんだ?その棒は何かの霊的アイテムじゃないのか?