「由葵、いる~?」

「実桜、どうしたの?」

「お見舞いだよ。
 調子はどう?」

「だいぶ楽になったよ。
 でもね、その・・・。」

「どうかした?」

「あのね、私最近変なの。」

「何が?」

「その・・・。
 いっつも沖田さんのこと考えてて
 早く来ないかな、とか考えてて
 考えるたびにドキドキする自分がいて・・・。」

実桜はきょとんとしていたが
やがて表情をぱあと明るくさせ

「由葵!それは"恋"だよ♪」

「恋!?」

「そ、よかった~」

「違う!断じて違う!!」

「どうして?」

「恋は錯覚。囚われてはいけない。
 (私には使命があるのだから)」

実桜にも言っていない危険な使命。
それを背負って由葵は生きてきた。

(私の力を恐れてみんなは私を避けた。
 だけど、私には守りたいものがある。
 背負わなければならない使命がある。
 恋なんて錯覚に囚われるわけにはいかない!!)

「由葵・・・。本当にそう思っているの?」

実桜は悲しそうに聞いた。

由葵は静かに頷いた。

「私は何にもとらわれずに
 精一杯生きていく。」

「そう・・・。
 (今の由葵に何を言っても無駄かな。)」

実桜はこれ以上言っても意味がないと感じて
諦めて、部屋を出て行った。