「なんだァ?この箱は」

携帯がない時代なんて不便だろうね、と思わず考えてしまう。

「携帯電話というもので、遠く離れた相手と話せたり、色のついたほとがらを撮れたりする優れものです」

実際に操作して見せると、沖田さんの顔が、ぱあっと輝いた。

「すごいですねっ!未来にはこんなものがあるんですねっ!」

沖田さんは携帯をもっと見せてほしいといい、うちは沖田さんに携帯を渡した。

「あ、沖田さん。携帯を反対に閉じてはいけま」

バキッ

うちの言葉を遮るように、またもや妙な音が鳴る。

何かが壊れたような音。・・・見てはいけない気がしても、見てしまった。

「どうしました?」

沖田さんの手には真っ二つに割れた可愛そうな携帯が握られていた。

うちは思わず悲鳴をあげてしまった。大切な携帯がっ!・・・

再びチャキっという音が聞こえたと思うと、首には銀色に輝く物体が当てられていた。

ええ、そうです。刀です。刀が当てられてます。

恐怖が一気に押し寄せ、悲鳴さえも呑み込んでしまった。

「うるさいですね・・・なんですか?小さな箱一つで・・・首を飛ばしてほしいのですか?」

邪悪なオーラが再び沖田さんの背中に漂っている。

「・・・総司、やめろ」

土方様の呆れた声に沖田さんは反応して、うちの首から刀をどける。

土方様がうちを庇って

「俺の部屋を血で汚すな。ほかの場所でやれ」

くれなかったぁぁぁぁぁっ!?

予想外の答えに、うちの気持ちはずぅぅんとなった。

「そうですね、すいませんでした。・・・さて、行きますか」

にこりと邪悪なオーラを消さずに笑う沖田さんはうちの腕を掴み、ずるずるとうちを引きずっていく。

ついたのは庭。太陽がさんさんとうちと沖田さんを照らす。

「ここなら遠慮なく首を飛ばせますね。恨まないでくださいね?」

庭に来た意味を納得した瞬間に、沖田さんはうちの目の前にいた。

うちは思わず、ポケットに手を入れ、あるものその2を取り出した。

ガキィィン

金属同士がぶつかる音がした。