「えー、ここの公式はー・・・」

長い長い授業が始まる。授業なんて聞くきもないので、窓の外を見た。
青空が何処までも続いている。白い雲はゆっくりと動き、うちも雲になりたいと思った。

「・・・り・・・千和っ・・・」

自分の名前を再び呼ばれ、隣の席の友達、水湖っちのほうを向いた。
水湖っちの話によると、うちは先生に当てられたようで、いつまでも前に行かないうちを水湖っちは不思議に思って、名前を呼んだらしい。
授業を全く聞いてなかったため、答えが全くわからない。
水湖っちは、そんなうちを見て、答えをノートの端に書いて見せてくれる。
席を立って黒板に水湖っちに教えてもらった答えを書いた。
先生は赤いチョークで答えを丸で囲んだ。正解だ。
流石、水湖っち。学年一位なだけである。と思いながら、席に戻った。

「もー・・・ちゃんと授業聞きなよね」

水湖っちは、くすりと笑って黒板のほうを向く。
そんな水湖っちにお礼をいい、また窓の外を見た。


終了のチャイムが鳴り、生徒は一斉に帰る準備を始める。
帰り際、水湖っちは何か用事がある、と言って一緒に帰ることができなくなった。
仕方なく一人で歩いていると、前には"あの"中北君がいた。
気まずい雰囲気の中、中北君の横を通りすぎようとしたとき、中北君がうちの体をどんっと押す。
にやっと笑っている中北君を視界に映したまま、うちは車道に放り出された。

前には大型トラックがうちに迫ってきている。

住宅街にブレーキ音が鳴り響き、うちの体はふわっと宙に浮いた。
途端に眩しい光が身体を包み込む。
包み込まれた瞬間、うちの意識は朦朧とし、瞼は自然と落ちていった。