「土方さん・・・ちょっといいかな?」

自分名前を呼ばれ、後ろを振り返る。
そこにいたのは同じクラスの中北君。人気者でモテる感じ。

『どうしたの?』

首をかしげて聞けば、中北君は顔を赤くしながら答えた。

「あのさ・・・俺と・・・その・・・」

しどろもどろに答える中北君。まるで女の子。

「・・・付き合ってください」

中北君からやっとでた言葉は、小さくて聞き取るのに苦労した。
付き合ってください?・・・女の子みたいな子と付き合えってこと?

『・・・ごめんなさい』

少し申し訳なさそうに答える。うちは貴方のことが好きじゃありません。

「っ・・・好きな・・・人でも・・・いるんですか?・・・」

今にも泣きそうな顔の中北君。いつもみたいなかっこつけた態度は何処へ行ったの?

『うん・・・いるよ』

少し頬を赤らめながら脳に『あの人』を思うかべる。中北君は絶望的な顔。

「だ、だれっ!?」

慌てている中北君。そしてうちはお決まりの言葉を言う。

『新撰組、鬼の副長。土方歳三』

にこりと微笑んで言うと、中北君の顔は一変して驚いたような顔になっていた。
しかしその顔もすぐに呆れた顔になった。そして言ってはいけない事を中北君は言ってしまう。

「土方歳三ってあの?・・・もう死んでる人じゃん」

その言葉に、頭の中でぷちん、と何かが切れた音がした。

『死んでる人に恋しちゃ悪い?・・・残念だけど、うちはあんたみたいな女の子っぽい人は大っ嫌いだから。じゃあね』

言いたいことを言って、その場を立ち去る。後ろからは泣き声が聞こえてくる。
本当に女の子っぽい・・・あんたは乙女か、っつーの。
心の中で毒を吐きながら、教室へ戻った。途端にチャイムが鳴り、担任が入ってきた。
ああ、せっかくの昼休みが・・・と内心、中北君を恨みながらも先生の話を聞いた。