あれは、夏にしては、あまりぱっとしない、でも、じめじめとした、曇りの日。


肌にまとわりつく服は、汗を吸ったせいか、少し重く、さらに臭い。

女性としては、あまり人に知られたくないこの、なんとも言えない臭いを嗅ぎながら、私、杉原桃子(すぎはら ももこ)は、学校からの帰宅途中で、いつもの道を歩いていた。

田舎と都会の、丁度真ん中辺りに位置するここは、変にパトロールが多く、変に治安が悪く、なんというか、微妙に冴えないところである。


周りを見れば、鬱蒼と生い茂る木々も、コンクリートで積み上げられた、立派なビルも見える。


私は、空を見上げながら、並木道を歩いていた。