『水曜の午後一時・西棟の四番教室で』


 裕明の直筆なるそのメモを決して折り曲げないようにつまんで持ち、千帆はずるずると重たい気持ちで廊下を進んでいた。

外は雰囲気に合わせたように、鬱々と雨。

 常に変ではないということは、変な時もあると言うことだ。

裕明のご指示とは言え、やはりそんな先生の指導はかなりヤダ。

自分に悪いことが計画されているとは思えないけど、言ってみたら何か他にも取る道はあったかもしれない。

 言い損ねた自分が恨めしい。

朝からなんとか回避する方法を考え続け、友人も巻き込んで画策してみたものの、そのようなものがあるはずはない。

裕明に嫌がっていることを知られずにレッスンをさぼるとしたら、あとは小野里先生とやらに危害を加える犯罪的な手段しか。

人が法を犯す時って、こういう追い詰められた心境の時なんじゃないだろうか。