アルヴァレス3-2


 ぶつぶつと何か言っているなと思ったけれど、初めの方はきちんと聞いていなかった。

練習音もとぎれはしなかったから、大して重要なことでもないと思っていたせいもある。

 裕明の課題のバッハも、千帆はかなりこなせるようになってきていた。

これだけ進歩すりゃー、あの鬼教官も満足だろう。

まったく、温厚そうなのは見せかけで、ぐいぐいと強引なこと。ほんの短い間に見事に矯正して下さったもんだ。

 奏と裕明の関係をどう理解し消化したものかはわからないが、感情を荒立たせることはなかった。

奏とは仲良くしているらしい。

高校に入ってできた、新しい友達の一人。オモシロイ娘だということだ。