「つまり、特別なのは奏なんだな? 奏以外は勝負にならないんだな」

「その言葉は間違ってはいないけれど、あなたが考えているのとはかなり違うわね」

眉の間に皺が生まれている。

反論申し上げようという状況にて、かつてもよくそんな顔をしたものだ。

「裕明はそうではないの。そんなに簡単じゃないのよ」

「なんだよ。どういうことだ?」

「時間が必要なのよ、あの子にはね。もうしばらくのことでしょうけど」

「わかんないぞ、アメリア」

「そうでしょうね」