日が長くなったとはいえ、さすがに太陽は姿を隠してしまった時間となっていた。

大通りを車はとばしていくが、歩道を行くのは二人だけで、反対車線すら人影はない。

横にのびている校舎のレンガ塀は、しょぼい街灯と車の灯ではさらに古びて見えてしまう。

 暗くて重い。

千帆には性格的に苦手な雰囲気だった。

話せばいいじゃん、と思う。

一緒に帰ろうって、それだけを実行してどうする。

けれど奏は、一人鼻歌で楽しそうな様子でいる。それだけを実行していてもいいみたいだ。

いや、けれど!

なにを迷っているんだ、と思った。

校舎を半分、進んだところ。

奏にはいろいろと思うところはあるけれど、案外普通の女の子だということはわかったわけだから普通の質問から始めてみよう。

始めなくては始まらない。
千帆は息を吸い込み、聞いてみた。