インサイド

そもそも奏者の選出は前年度中に済まされていた。

各々の企画に合わせた様々なオーディションを経て、参加者リストは新学期には中央掲示板に掲げられる。

独奏、合奏、そして人気の高いオーケストラ。

年によっては大学からのゲスト、あるいは教師が立つ指揮台に、多数の支持を得て推し上げられたのは、自らも属する執行部を呆れ顔で語っているこの三年生なのだった。

「私、文化祭とか来なかったから初めてなんですよ、指揮者な先輩見れるのって。すごいかっこよかったって聞いてますよー」

「そーかぁ? オレ、自分ではもう少しましかと思ってたから、ビデオを観た時はショックだったよ。なんでそんな顔するかな、と思って」

「そんな顔……」

「今度は気をつける。絶対」

どんなだ。

なんてツッコミはともかく。

「ビデオがあるんですかっ? どこです? 資料用? 職員室?」