アルヴァレス 1

 軽快に連続していた音楽は突然に中断され、異様なくらいに真白な沈黙に襲われた。

 有り得ないとも言い切れないが、オレのご主人様は殺害されでもしたのだろうか。

劇的な場面に遭遇した経験の一つや二つは持っているとは言え、さすがに殺人事件とはお近付きになっていない。

成瀬の家のピアノになってからと言うものは、ただ一人の小さな子供を相手に穏やかな日々を重ねてきていたのだが、その生活環境もここでまさか消滅なんてことになってしまうのだろうか。

 長々と考える時間を与えた末に、静止していた両手が再び鍵盤に下りてきた。

生存を続行しているその明らかな証拠に、ばかげた夢想を切り上げる。


 と、その直後。