十年の間、同じ先生につき、強気で突っ走ってきたことをわかりやすく、千帆は好き嫌いの分かれた生徒と化していた。

つまり、好きなものしか練習しないわがまま娘。

音大付属のこの高校に志望を絞りました報告を聞いた時の先生の表情は、他人の反応に大雑把な千帆でも、今でも思い出せるほどに見事に途方に暮れていたのだ。

さて、どうこなすのか、課題曲というものを。

 目的のためなら努力はするのかと思いきや、受験会場での演奏に至っても取りこぼした印象を与えたことは確実な成果の程度。

合格基準に達した因は、自由選択曲にあるのだろうし、本格を目指すのなら苦手だのは言っていられないのだから心を入れ替えろとの、師の嘆きつぶやきに近い別れの言葉を、日も浅い過去として今のところはまだ記憶に残していた。

 聴かれていたというレッスンでは、まんまとその二曲を再現したのだ。

しかも入試が終わって以来弾いていなかったものだから、矯正は相当忘れ去られて、状態は緩みきっていたに違いない。

マズい。