けれどだんだんと、オレは遥を知るのだろう。

千帆は遥を運ぶのだ。

ここに。

おまえの、手が紡ぎ出す音楽に。


 繰り返し奏でられる曲は、泣くほどに懐かしい、黄昏の街の雨。

 千帆はしゃべらなくなった。

だから指先がしゃべり出した。

次から次に。音を、続く音を求め――。


 まだ輝きは微かに、ほんのり程度の温度上昇。

けれどこんな風にも始まりはするのだ。

知っていた。

どこで覚えたことなのか、それは思い出せない。

誰が教えてくれたことなのか。

いつのことであったのか。