アルヴァレス 5

 目指しているものがわかるようになってしまった。

誰を真似ようとしているのか。

蓋を開けるなり、課題もそっちのけでまた危なっかしい弾き方を。

けれどそれも、それなりになってはいた。結果として良くなっていると言っていい。


 裕明が止めないのだから、これは正しい道なのかもしれない。

そんな自分の考えに、体が震えた。

オレはいつの間にか、知らない男に支配されている。千帆に引きずられている証拠だ、これが。

君臨しすぎ。

まるで自分があの高校の生徒のように。


「もっと、こんな感じで……、ここはゆっくり……、だったかな」