そう――。 思えばそれからだ。 美里が、火事や放火という文字を見聞きするたび、この表情をするようになったのは。 亜紀をいまだに引きずっているぼくに、良い気がしないこともわかる。 だけど、美里の表情は、怒りに似たものとは若干ちがうのだ。 人が亡くなったという話からの恐怖とも取れるが、それだけじゃない。 やるせないほどに憂いを含んだ表情だった。