「今行くから。その車ちょっと待って!」 美里は、ぼくの車をどこかのバスか何かのようないいぶりで引き止める。 カツカツとヒールの音を響かせ駆け下り、助手席に乗りこんできた。 「樹(いつき)、ごめんね。遅れちゃって」 シートに座りながらいった美里の頭に視線をやって。 瞬間、ぼくは目をむいた。 「ど、どうしたんだよ……それ?」