愛してるの口づけ

でも、はっと別れに触れてポロっと頬に流れたものは、

初めて彼の言葉によって流したそれより、

とても冷たくて悲しいものだとわかった時に、

“なんてカッコ悪い”と自分の不格好さに口が動かなくなった。

その瞬間、体の力が抜けてその場に座り込んでしまった。

その時

「これ、返すよ。」

と私の横におかれた先輩に渡しておいた家のカギが

“カラン”と大きな音を立てて弾んだ。

先輩がカギと一緒に大粒の涙を落して行ったことを私は知っている。

たぶん、いや絶対、先輩は口ではそういいながら追いかけてほしかったのだろう

って今なら思える。

私もそうしたかったのだろうと思う。

かっこ悪いとか、都合がいいとか、

利用されているとか、

そういうことは“恋”をして相手を“愛している”限り仕方ないことであって、

そんなこと気にしているほうが変だ。

後で後悔するのは自分なんだと、私は泣いて悔んだ。

でも先輩は戻ってこなかった。

だから私は思った。

自分がかっこ悪くて都合よく遊ばれてどんどん利用されてもいいくらい相手のことを愛せる人に出会ったとき、

私はその人を愛するとしようと。

でも、私は結局弱かったってことなのだろう。