愛してるの口づけ

私は、
一応おかゆを食べようとダイニングの椅子に腰かけたがが、

こんな私を心からいたわり看病してくれいる彼を思うととても

それを食べる気にはなれなかった。

手元にあったスプーンを投げた。

“さじを投げる”って言葉がある。

もう私はお手上げだった。

甘えに甘えてわがままになった自分をどう抑えていいのか全然わからなかった。

できればもう前には一歩も進みたくなかった。明日なんて来なくてよかった。

“カラン”

とスプーンが落ちた音がしたときにまた、先輩との思い出が戻ってきた。

今日みたいに寒い夜だった。

先輩が元カノと連絡を取り合っていた。

先輩が「好き」とか「愛してる」とかそういう言葉を私以外に言っていると思うと、

ショックだったけど、私に戻ってきてくれると少しの迷いもなく信じていた私は、

不規則に夜中にかかってくる電話で

「私はずっと好きです。愛しています。」

と理由は言わず、しきりに愛を伝えていた。

しかし、先輩は電話してきたくせに浮かない声で

「あぁ」とか「おぅ」とか気持ちのない返事をして話をずらしていた。