聖が「涼介たちに借りた」と言っていた、どこか盛り上がり辛い、有名ボードゲームのパロディ品。
マスに書かれた内容のシュールさもさることながら、イカサマありきのルール、数字の滅茶苦茶なルーレット、やたら種類豊富なカードやマネー。
マス周囲のイラストまで絶妙に変な絵に変えてある手の込みようである。

直姫と真琴と里吉を除く五人は『涼介たち』というその持ち主を既知のようだったが、わざわざ特注であんなゲームを作らせる人たち、知り合いたいとも思わない、と考えたのを、思い出したのだ。


「え……東先輩が? ホントに?」


思わず確認もしてしまう。
なにしろ、聞いていた話と直姫の知る千佐都とでは、印象があまりに食い違い過ぎるのだ。


「単体だとマトモっぽく見えるんだよ。五人揃った時のノリはほんとついて行けねぇから、直姫も真琴も、気を付けとけよ」


あらかじめ注意を喚起するほど、ということなのだろうか。
とてもそうは見えないが、本当に面倒くさそうに言った聖の表情は、嘘には見えなかった。

とにもかくにも、なんとなく危険で鬱陶しい香りがしたのは、確かなこと。
そしてそれがなんとなくでも単なる予感でもないことに気付くのは、そう遅くはないのである。