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「良かったですね! 仲直りして」


ようやく生徒会室に、いつもの平穏でほのぼのとした雰囲気が戻った気がした。
戻ったどころか、人を無意識に和ませるオーラを放つ彼が、今日はいつもより三割増しでのほほんとした笑顔を浮かべている。


「おー真琴、機嫌いいねー」
「だって、嬉しいじゃないですか、二人が仲良くしてると」
「な、別に仲良くなんて」


人一倍他人を気遣う彼のことだ。
緊迫した空気が解けたことに、よほど安心したのだろうか。
人のなにげない一言を過敏に否定したがる紅も、ようやくいつもの調子が戻ったようだった。

しかし夏生は、鼻先だけで薄い溜め息を吐く。


「そんなに良いことばっかりでもないんじゃない? 油断するといやがらせ、悪化しかねないですよ」
「じゃあ俺が付きっきりで見張っててあげることにしまーす」
「遠慮しておきます」
「つーか准先輩、今日仕事じゃにゃいの?」
「あ、そーだった。もう帰んなきゃ」
「なんだ、早速役目果たせてないじゃないスかー」
「だいたい私は自分の身くらい自分で守れると」
「わかんないよー? 昨日のリップクリームみたいに、また予想外なとこに仕込まれてるかも」