いやがらせの内容も、教科書などの私物を隠す、今時小学生でもやらないような程度の低いものから、机に罵倒の言葉を羅列した不気味な手紙や、刃を出したカッターナイフが入っているなど、なかなか質の悪いものまで様々だ。

中庭を歩いている時に、上から小石や水が降ってきたこともあるらしい。
もっとも、それらは紅の勘と動体視力と反射神経により、素早く回避されたようだが。

精神的なダメージを与えたいのか、身体的に傷付けたいのか、そのどちらでもいいのか。
漠然と、とにかく困らせたい、というような意思も透けて見える。
だがはっきりした目的がわからない以上、なにをどう防げばいいのかわからないのだ。


「とりあえず、信頼できるあたりからじわじわ聞き込みしてくしかないっスかねー……?」
「紅先輩と直接接点があるのは、三年生と、剣道部……ですかね?」
「たまに空手部とか合気道部とか、華道部にも顔出してるって言ってにゃかった?」
「でも、最初は調べる範囲を限定したほうがよくないですか?」
「そうだね。進展がなければ、少しずつ広げていいけばいい」
「准乃介先輩は、なんにもされてないんですか?」
「ん?」


彼が今日、生徒会室に来て初めて口を開いたのが、真琴が尋ねたこの時だった。
普段の准乃介ならば考えられないことなのだが、理由も考えていることもさっぱりわからず、どう接したらいいのかもいまいち掴めない。
改めて実感するが、彼には謎が多すぎるのだ。