あんな、というのは、突撃訪問してきた彼らの、千佐都は究極的に男運が悪い、という話のことだろう。
初恋の相手は男色だったとか、その次に惚れた人は熟女好きだったとか、相手からの告白で初めて付き合った中学の同級生は極端な被虐趣味で、千佐都を好きになった理由がサドっ気がありそうな顔だったからだと言われ、気味が悪くなって一週間で別れた、だとか。

そんな残念すぎる恋愛遍歴を語られては、いくら他人の気持ちに鈍い直姫とはいえ、あからさまな牽制と忠告だと気付かないはずがなかった。

もっとも、本当のところはそれもただの口実で、真意は自分たちの幼馴染みが惚れた男がどんな奴か知りたいという、シスコンの兄のような気持ちだったのだろう。
実際は男ですらないと知ったら、彼らはどんな顔をするだろうか。
千佐都の男運の悪さは、確かに筋金入りらしい。


「あ、それに、東先輩の表情が」
「へ?」
「一昨日聖先輩に告白してた子みたいだったんで」
「は、なんで直姫が知ってんの!?」
「別に、見かけただけですよ。夏生先輩と」
「あぁ、ムービー撮ったやつ」
「ちょっと待てなに撮ってんだぁぁぁ!!」


さらりと吐かれた言葉にも素早く反応して切り返すのは、さすが聖、と、言うべきか。
気付けば恋宵が、白けた目線を送っていた。


「へぇー、告白……」
「ちょ、まっ、恋宵ちゃん!?」
「昨日やけに機嫌良かったのはそーゆうわけにょろねぇ」
「ちが、違うから!」
「別に、言い訳する必要にゃんかないでしょー?」
「な……、違うんだってぇぇぇぇぇぇ」


放課後の北校舎にはやはり、聖の叫びと妙な空気が広がって、消えるのだった。


「……やっぱり直姫と夏生って結構良いコンビだと思うの、私だけだろうか」
「いや、同感ー」