ONLOOKER Ⅲ



時間の流れ方までゆっくりとしているかのような錯覚を覚える中、小動物のような2人は、端から聞けばなんとも不思議な会話を繰り広げている。

「先輩先輩、絶対音感って後からでも身に着くって、ほんとですかっ?」
「わかんないけろ、そうにゃの? どうやるんじゃろ」
「……今、じゃろって言ったか」
「言いましたね……」
「じゃろ……じゃろはいくらなんでも恋宵ちゃん……」
「いくらなんでもなぁに、ひじりん」
「えぇ!? 聞こえたの!?」
「わー、やっぱり聴力も高いんですねぇ」

そうにゃのよ大変よ?と言ってにへらと笑う恋宵が、数日前に比べていくらか元気を取り戻しているように見えて、直姫は人知れず、それどころか自分でも気付かないうちに、僅かに安堵していた。
やはり、吐き出す場があると人は多少なりとも救われるものなのだろうか。
それならばいつも一緒にいる聖や夏生、相談に乗るのが上手そうな紅などが相手でもいいのではと思ったが、あれは独り言だったのだから、と思い直した。
あの時直姫は確かに、恋宵の隣になんて“いなかった”のだ。