「……はい、そうですけど……」
「あ、やっぱりー。オッキーに聞いても新入生のことなんにも教えてくれないからつまんなかったんだー。ほんと冷たいよねぇ。」
「オッキー……?」
聞き覚えのあるようなないような、そんな名前に、首を傾げる。
しかし聞き返した声に反応して答えたのはにこにこ笑っている彼ではなく、その隣に立つ、背の高い色白の男子生徒だった。
「あぁ、沖谷や。こいつ人につまらんアダ名付けんの好きやねん」
それならばもう少し捻った呼び方をすればいいのにとか、誰にでも優しく愛想が良いはずの准乃介が冷たいとはどういうことだろうとか、それよりもどうしてこの人関西弁なんだろうとか。
思うところは多くあったが、それすらも面倒に感じた直姫は、なにも聞かなかった。
なにより、前々から言われていた、“3年B組の五人組”の話。
夏生や聖がいつも渋い顔をして話していた理由を、今になってようやく理解しかけていたのだ。
「……な、それよか西林寺くんよー」
独特の訛りに顔を上げれば、いつの間にかそばに寄ってきていたその人が、にやりと笑う。
直姫の背が低いので背中を丸めているのだが、そのせいか、やけに圧迫感を感じる。
どこの方言なのかもよくわからない言葉を話す彼は、直姫の顔を覗き込んだ。
今更ながら思うのだが、自分は面倒事を察知するのが少し遅いのではないか、と直姫は考える。
「……なんでしょう?」
「そんな警戒せんでもえぇよ。ウチの千佐都ちゃんがよー世話になっとるみたいやんか、なぁ?」
「いや……別に、そんなことは」
「放課後」
ぼそり、と。
耳元に低く呟かれた声と、笑わない目許に、眉間が痛むのを感じた。
どうしてこう、また次から次へと。
「ちょーっと、顔貸しぃ?」


