「あなたなんか…………世間に、本当の自分を見せることも、できないくせにっ……!」

そんなの自分が一番悔しい。そんなの自分が一番苦しんでいる。そんなの自分が一番。
言い返す言葉は浮かんだが、口を開けなかった。

「あなたは才能にも、環境にも、恵まれて、いるのにっ……あんな、軽薄な態度を隠した、ふざけた気持ちで」

言葉を探しながら、乃恵は必死に恋宵を傷付けようとしている。
彼女の拳も、同じようにきつく握りしめたられていた。

「私は……、小さい頃からの夢がある! あなたみたいに、なにか持て余しているものがあるから、だからこの業界に入ったわけじゃないんです!」

つい最近生徒会室でやってみせたように、震える声を荒げているが、あの時よりもはるかに重く、悲痛な声だ。
うまく表現できる言葉がなかなか見つからないのか、視線はうろうろとあちこちを忙しなく移動して、もどかしさに時々眉を歪めている。