「……疲れた。」

ぶっきらぼうな夏生の言い方は、本心からのようだった。
榑松の兄ということで、身内のような錯覚を多少なりとも抱いていたのかもしれない。
しかし落葉松は、妙に人当たりのいい態度とは裏腹に言葉の選び方も仕草も慎重で、あれは自分の態度が相手に与える印象や影響を熟知している人間の振る舞いだと感じた。
声色だけなら和やかに進んでいるような話し合いだったが、会話の内容や視線の応酬には緊張感が張りつめていて、直接落葉松と言葉を交わさなかった聖や真琴でさえ、2人が帰った瞬間に大きく溜め息を吐いた。