「恋宵先輩、それ新曲ですか?」
「そーよー。あ、ひじぃは聴いたことあるデショー」
「うん。路上ライブでやってたよね?」
「アタシがねー、初めて作った曲にゃのよ。中学1年生の時に」

音楽にあまり詳しくない直姫が彼女に話題を振ったことはないが、その話をしている時の恋宵が、一番活き活きしていると、直姫は思う。
しりとりをしている時より、山積みのお菓子を目の前にした時より、誰と一緒にいる時より、だ。

「そうなんですか……でもどうしてその曲を、今になって?」
「あのねー、もうすぐデビュー1周年にゃのよ」
「あ、そっか……おめでとうございます」
「まだ早いにょろよー」

にこにこと、楽しそうに苦笑を浮かべる恋宵が、やけに印象的だった。

そしてことの始まりは、その、次の日。