ONLOOKER Ⅲ


 * *

沈黙を打ち破るのは、相当に困難なことのように思えた。
いつもならその役割を自然に果たしてくれる彼女が、膨れっ面で鼻を啜っているのだ。

彼女がそんなでは、聖だって乗るに乗れず、表情を窺うようにきょろきょろと目を泳がせるしかない。
紅はやはりきつく握った掌を解けないままだったし、そんな重苦しい空気の中で口火を切る勇気も思い切りのよさも、真琴にはなかった。
あとの三人が口を開く気すら見せないのは、単に面倒だからである可能性が大きいが、それでも多少気まずく感じていることは確かだ。

極力静かに吐く誰かの溜め息が、あまりの静寂に、逆に耳に障る。
それが一際大きく響いたあと、低く、誰かの鼓膜を震わせる気など毛頭ないかのように呟かれた声は、よく通った。


「直姫」
「……なんですか」
「さっき、なんであんな鎌かけたの」
「あぁ……あれ」
「えっ、ちょっと待って」


何事もなかったように、なんでもないかのようにいつもの調子で話す直姫を、慌てて制したのは、聖と真琴だった。
彼らは、未だほとんどの事情を把握しきれていないのだ。


「一昨日の放課後、北校舎で里田さんを見た人が……ってとこは、嘘なんですよね?」
「俺もそんなこと聞いてないよ? 鎌かけたって、どっから?」
「そのへんからほとんど全部、ですかね……」


直姫の答えに、聖も真琴も、恋宵や紅までも、眉を寄せた。
けろりとして答える彼女の真意も、根底の考えも、はじめから今までまったく読めないままなのだ。
聖は、視線をさ迷わせた。


「えーと……直姫、いつから犯人わかってたわけ?」
「え、最初に話聞いた時ぐらいからですけど」


一体全体、なにを考えなにを思っているのか、ほんの少し、小指の先くらいでいいから表情や態度に表してほしいと思うのは、間違いだろうか。
今度こそ彼らは、思いきり顔を歪めた。