「……こ、恋宵……?」
いつもの底なしの明るさと無邪気さは、すっかり鳴りを潜めてしまっている。
恋宵は、見たことのないような冷めた目で、ただじっと里田を見ていた。
あまり見ることのない真剣な表情は、この人は本当に恋宵なのかと、疑ってしまうほど険しい。
里田は、忌々しげに眉を潜めて、恋宵を見返した。
「あなたに……なにがわかるの」
「あなたこそ、紅ちゃんのなにを知ってんの? 紅ちゃんがなんの努力もしてないなんて、本気で思ってるの」
口調も荒く、恋宵は吐き出すように言った。
怒ることに慣れていないみたいに、言葉の端々に震えがある。
だが彼女は、なおも続けた。
「毎日髪のお手入れに1時間は使ってるの。毎日3時間は竹刀持ってるの。手のひらはまめだらけだし、お洒落より筋トレが先だし。どうやったら後輩に怖がられないように指導できるか、本気で悩んで眠れなくなるような人なのっ」
「ちょ、こよ、い」
「ほんとはバカで不器用で心配性なの! テスト前なんかどれだけ勉強してたって不安そうにしてるのに、負けず嫌いだから、全然余裕なふりばっかりすんのっ……!」
「ば、バカ!?」
もはや、褒めているのか貶しているのかもわからない。
ただわかるのは、紅の制止の声も聞かずに捲し立てる恋宵が、里田にどうしようもなく怒りを感じていることだけだ。


