空の機嫌がいいときには、となりの県まで見わたせるという絶好のスポット。
そこには、ナップサックを背負った登山家のようなフランス人(英・仏語は少しできるので判別できた)が、数人であれこれと話していた。
比叡山へでも登るつもりだろうか?
『ああ、楽しかった』
望遠鏡にかなりの額をつぎこんだ涼子は、満足そうにノートへ書き、伸びをして背中を反らせた。
途中、ぼくが住む街がどこかという質問や、本当に碁盤の目のように見えるのね、という感想がひっきりなしに走り書きされた。
けれど、ぼくの答えを聞く間もなく、彼女は次の話題をさらさらと書き殴っていた。
(要するに、ただ騒いでただけ、か)


