一瞬だけ、人波がぼくに変な目をよこしたけれど、その目はすぐ興味を失って階段下に注がれた。 「……涼、子?」 背後にいたのは、白いロングコートに身を包んだ女性。 ウェブカメラで見るのとはまるで印象が違うけれど、間違いなく涼子だった。 肩まである髪に、カールしたまつげが映える、目尻の少しだけ下がったふた重の瞳。 高さの塩梅がちょうどいい鼻に、淡いピンクのルージュをひいた薄めの唇をたずさえた、 紛れもないぼくの恋人。