黒いタートルネックのセーターに、黒いコート、黒いマフラーに黒いジーンズ、そして黒い靴。


ぼくは黒一色の「カラス」みたいな格好をしていて、それが彼女へのアピールだった。


カメラ以外、実際の姿を見たことがないし、京都駅という人の往来が特に激しい場所でたがいを認識するには、それなりのサインが必要になる。


頭に帽子をかぶっても、それらしい人は五万といるし。


ハダカで踊っていれば、見つけてもらう前に捕まるし……。


というわけで、前日にメールをしたときに、


「カラスみたいな格好」


という意見で落ち着いたのだ。


もっとも、ぼくが持っている数少ない服のほとんどは黒だったので、それ以外の選択肢は最初からなかったのだけれど。